「おどかすなよ……」
「ふふっ。ごめん」
奈乃は胸の前で手を合わせて微笑む。
「来んの早くね?」
「うん。朝早く目が覚めて。湊くんは?こんなとこで何してるの?」
「まぁ……いろいろ」
「いろいろ?最近、結雨ちゃんと一緒に登校してこないけど、どぉして?」
俺は黙ったまま奈乃の顔を見つめる。
なんとなく聞きづらくて、なかなか聞けずにいたけど。
ちょうどよかった。
あのノートのことを聞こう。
「なぁ、奈乃……」
「なぁに?」
結雨がラクガキされたあの日、奈乃のノートを偶然見てしまった。
最後のページを。
黒い震えた文字で書かれた、いくつもの“消えろ”の言葉。
結雨と同じように、奈乃も嫌がらせをされているのだろうか。
だとしたら奈乃は、どうして俺らに何も言わずに黙っているんだろう。
俺が疑っている人物が犯人だったとしたら、結雨とは関連があるけど……。
どうして奈乃にまで……?
それとも結雨を傷つけている犯人と、奈乃のノートの件は、
また別の問題なのだろうか……?
「湊くん?……あっ!」
奈乃は何か思いついたように、胸の前でパンッと手を合わせた。
「もしかして、結雨ちゃんにひどいことした犯人捕まえようとして、毎朝ここで見張ってるとか?」
「ん……まぁ」
「カッコイイ~!さすが結雨ちゃんの彼氏だねっ」
奈乃は満面の笑みを見せる。
「普段はクールなフリしてても、やっぱり結雨ちゃんのこと大切に想ってるんだ~」
いや、彼氏っつったって、偽物の彼氏だけどな。
アイツの復讐に付き合わされてるだけって……。
そうアイツの復讐が終われば、俺は彼氏じゃなくなる。
ただの幼なじみに戻るんだよ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
