「まだなのにぃぃぃ――!」
あたしは勢いよく布団をまくりあげ、飛び起きた。
「……ハァ、ハァ、ハァ……っ」
……あれ?夢?
カーテンの隙間から差し込む白い光に、朝だと気づく。
「夢か……」
部屋の中に、湊の姿はなかった。
どこからが夢だったの?
湊が部屋に来てマンガを読み始めて、あたしはいつのまにか寝ちゃって……
んで、そのあとのことは完全に夢だよね?
うん、夢に決まってるわな。
だって、湊のキャラおかしかったもん。
「あんなこと言うはずないし」
“こっちこいよ”
“おまえの初めては俺がもらう”
「なにこの夢はっ」
夢だとわかったいまも、体中が熱くて心臓がバクバクしてる。
「あーもぉ!なんであんな夢見たんだろぉ……」
あたしは頭を抱えて、グシャグシャと髪をかきまわす。
「湊には絶対言えない夢だわ」
ベッド横の小さなライトの灯りは消えていて、湊が読んでいたはずのマンガも本棚に戻してあった。
昨夜、湊は何時までここにいたんだろう。
――ガチャ。
部屋のドアが開き、お母さんがあたしに微笑む。
「結雨、お母さん仕事に行くわね」
「いってらっしゃーい」
あたしはベッドの上から、お母さんに手を振る。
「湊のこと起こさないと……」
「あら、湊くんならもう学校行ったわよ?」
部屋を出ていこうとしたお母さんの言葉で、あたしは一気に目が覚める。
「えっ!?もぉ学校行ったの?なんで?」
「湊くんからは何も聞いてないけど……あんたたち、またケンカでもしたの?」
「してないよ」
「そ?ならいいけど。仲良くするのよ?」
バスケ部の朝練でもあるのかな?
朝は苦手なくせに。
寝起きだって、いつもすっごく悪いくせに。
あたしが起きる前に学校に行くなんて、珍しいこともあるもんだわ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
