校内で彼女の顔は何度も見たことがあった。でも名前までは知らなかった。
二階堂先輩の女友達のひとりだと、特に気にはしていなかった。
あの日、保健室で先輩とキスしている彼女を見るまでは。
「あの人って、女子バスケ部の人だよね?」
「あぁ。来瞳深珠」
……来瞳深珠。
彼女の名前を知った。
彼女のことを知りたいと思う気持ちと、知りたくないと思う気持ちで、ずっと複雑な想いだった。
「……来瞳先輩って、どんな人?」
「さぁな。よくわかんね」
思い出したくなくても
一瞬でよみがえってくる
保健室での光景
「確かにアイツとは昔から仲いいみてぇだけどな。アイツの元カノっていう噂もあるし……」
「元カノ……」
別れたあとも、あたしと付き合ってる間も
ふたりの関係は……体の関係は続いてたってことだよね。
「おまえ……大丈夫か?」
湊の瞳を見て、あたしは小さくうなずく。
先輩に恋をしていたあたしの“好き”という想いは、
あの日、先輩に裏切られて、どんな形に変わったのだろう。
付き合っていた頃の、
純粋な“好き”ではないことには、自分でも気づいてる。
あたしの心の中。
この感情は何なのだろう?
憎しみ?悲しみ?嫉妬?
それとも……。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
