「いつまでそこにいんの?」
「え?あ、行くわよ……っ!ぎゃあっ!」
あたしは濡れたバスマットで足を滑らせ、後ろにひっくり返りそうになったけど、
咄嗟に湊が抱き止めてくれた。
「……っぶね」
あたしの目の前には、湊の顔。
湊の濡れた髪から滴がポタポタと、あたしの顔の上に落ちてくる。
「気ぃつけろよ。死ぬぞ?」
湊の瞳を見つめたままうなずくと、湊はジッとあたしの顔を見て言った。
「つか、おまえ顔赤くね?」
「え……?」
あ、あか、赤い……?
「熱でもあんの?」
湊は左腕であたしの体を抱きかかえたまま、右手をそっとあたしのおでこにあてる。
「んー」
首を傾げる湊は、右手を退けると、おでことおでこをくっつけた。
「どっちかっつーと俺のが熱い気がすんだけど」
「ね、熱なんてないってば」
「なにキレてんだよ」
「キレてないしっ」
ねぇ、どうしてだろう。
どうして……?
自分でもわかんないよ。
どうしていま、あたしの胸は、
こんなにもドキドキしてるのかな――。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
