鏡越しに現れたのは、白い湯気の中、腰にバスタオルを巻いた裸の湊。
「ちょっ……!」
びっくりしたあたしは振り返ってしまい、湊とバッチリ目が合ってしまった。
シャンプーのいい香りが漂い、湊の濡れた黒髪からは水が滴る。
温まり、ほんのり赤くなっている湊の体。
あたしの心臓は大きく脈打つ。
「おまえ、まだいたのかよ」
目を細める湊はいつもの冷めた口調で、あたしを見た。
「い、いきなり出てこないでよっ!」
「遅刻すっから早く出ろっつったのおまえだろ」
「言ったけど……ちゃんと聞いてるなら返事くらいしなさいよっ」
「朝からうるせーなー」
湊はめんどくさそうな顔をして、浴室から出てきた。
洗面所に立った湊の体を、あたしはジーッと見てしまう。
湊の裸なんて、見慣れてるはずなのに。
なのに、どうして。どうして、あたし……。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
