結雨の視線を感じて俺が横を向くと、結雨は俺の顔をジッと見つめていた。
「んだよ?」
「いや……どの口が言うてるのかと思いまして」
「あ?」
「んふふ。だって毎晩あたしにマッサージさせてる人がよ?まさかねぇ。いじめについて語られるとは……ねぇ?」
結雨はニヤニヤしながら俺に顔を近づける。
「何が言いたいんだよ?俺はおまえのこといじめた覚えなんて1度もねぇけど」
「へぇ~。昔の記憶とか、ぜーんぶ吹っ飛んじゃったのかしらぁ?湊ちゃんはぁ」
そう言いながら結雨は、俺の両頬をつねって横に引っ張る。
「……オイ、コラ。人の顔で遊ぶな」
「ふふっ」
「やーめーろ」
俺は結雨の両手を掴んで、下に下ろした。
「べつに俺は、おまえの彼氏やめてもいーんだぞ」
「え!?」
結雨は大きく目を見開いた。
「いじめてるとか言われたくねぇし」
「あははぁ~。いまのウソ!ウソウソ、冗談よぉ~もぉ~。今晩も丁寧にマッサージさせてもらいますんで、よろしくお願いしますよぉ~」
そう言って結雨は、俺の腕に絡みついてニコッと笑った。
「ホント調子いーな」
目を細めた俺は、冷たく言い放つ。
すると、結雨は真面目な表情で静かに言った。
「……ありがとね、湊」
「あ?」
「あたしのこと思って、連れ出してくれたんでしょ?」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
