結雨を連れて階段を上がっていく。
――バンッ。
少しだけ開いていた屋上の扉を勢いよく蹴った。
屋上にやってくると、町の景色と晴れた青空が広がっていた。
俺は立ち止まり、掴んでいた結雨の手を離す。
「……大丈夫か?」
俺の言葉に、結雨は無理して笑顔を見せた。
「うん」
……大丈夫なわけねぇよな。
「あんなことされたの初めてだから、ちょっとビックリしちゃったけど」
結雨は歩き出し、屋上の柵の前で止まった。
柵にもたれかかった結雨は、小さな声でつぶやく。
「あたし……なんかしちゃったかな……」
俺は結雨の隣に行き、少しうつむいた結雨の横顔を見つめる。
「アホ」
俺は、あきれた声で言った。
「なんで自分のこと責めんだよ?」
「だって……あんなことされるってさぁ……」
結雨の弱々しい声に、俺はため息をつく。
「どんな理由だよ?」
「え?」
「……誰かのこと傷つけたり、いじめてもいい理由なんてあんのか?」
俺は遠くを見つめてつぶやく。
「そんな理由……どこにも存在しねぇと思うけど。俺は」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
