恋する僕らのひみつ。




もう母親は帰ってこない……



母親に逢えない寂しさと、



母親に捨てられた悲しさと、



息子の俺よりも、あの男を選んだ母親への憎しみで。



まだ幼かった俺は、涙が止まらなかった。



俺たちはベランダから、母親が男と車に乗り込む姿を見つめる。



『……湊ちゃん』



『……っ』



『湊ちゃん』



そのとき、



静かにそっと

俺の手を握りしめてくれたのは



……結雨だった。



『湊ちゃんには、結雨がついてるよ』



目を伏せたまま、結雨はそう言ってくれた。



――母親に振り払われた俺の手を、そっと握りしめてくれた結雨の小さな手。



10年前のあの日。



桜の花びらが舞う中、母親は俺の前から消えていった――。