『お母さん?』
『……ごめんね……っ……』
どうして答えてくれないんだろう。
お母さんはもう……帰ってこないってこと……?
母親は、俺の手をほどいて玄関のドアを開けようとした。
……行っちゃう。
お母さんがどこかに。
俺を置いてどこかに……。
『行かないでっ!お母さん……っ』
そう言って俺は、
もう一度強く、母親の手を掴んだ。
そしたら今度は
母親は、俺のその手を。
行かないでと言ったその手を
振り払ったんだ……。
『ごめんね……湊……』
――バタンッ。
母親は俺をその場に残して、家から出て行った。
俺は一瞬、何が起きたのかわからなくて。
母親に振り払われた手のひらを見つめたまま、動けなかった。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
