鳴り止むことのないケータイの着信音。
『湊……お母さんもう行かなきゃ……』
母親は俺の体を離し、立ち上がってスーツケースを引きずって玄関に向かう。
その場に立ちつくす俺は、母親の後ろ姿を見つめた。
『お母さん……』
一度も振り返らずに行こうとする母親に寂しさを感じた俺は、母親の元へ駆け寄っていき、
玄関を出ようとした母親の手を後ろから掴んだ。
『すぐに帰ってくるよね……?』
どうしてかわからないけど。
なぜか俺は……
母親がこのままどこかに行って、帰ってこないんじゃないかって、
そんな不安に襲われた。
『ごめんね、湊……っ』
『いつ帰ってくる?今日の夜?明日?』
『……っ』


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
