母親は、しがみつく俺の頭を優しく撫でた。
『……湊は一緒に行けないの』
『どぉして……?』
母親が一体どこに行こうとしてるのか、俺にはわからなかった。
ただ、どこか遠いところへ行ってしまうような気がして。
置いていかれるのが嫌で。
不安だけが心の中をいっぱいにした。
『ごめんね』
無理やり笑って、俺に謝る母親の声は。
『ごめんね……湊……』
細く震えてた。
どうして……
どうして一緒に行っちゃダメなんだろうって。
だから聞いた。
怖かったけど、聞くしかなかった。
『……ボクのこと嫌いになったの?』
母親の瞳を見つめて、俺はそう聞いたんだ。
『……そんなわけないでしょ?大好きよ』
母親は床に膝をついて、俺の体を強くキツく抱き締めた。
『大好きよ。湊』
その言葉に、ホッと安心したのに。
その時、母親のケータイの音が鳴り響いた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
