母親は何も言わずに視線を落とした。 『……どこ行くの?ねぇ……お母さん……』 母親は俺の顔を見て、口を結んだまま微笑んだ。 母親のその大きな瞳には、涙が浮かんでいて。 『湊、イイ子にしてるのよ』 どこか遠くに行ってしまうような……そんな言い方に聞こえた。 『お父さんの言うこと、ちゃんと聞いてね』 『どっか行くの?ボクも行く』 俺はランドセルを床に放り、母親の体にしがみついた。 『お母さんと一緒に行きたい』