恋する僕らのひみつ。




――10年前の春。



俺が小学校から家に帰ってくると、仕事で家にいないはずの母親がなぜかそこにいた。



『そ、湊……おかえり……』

『あれ?お母さん、今日って仕事じゃないの?』



少し動揺しているような母親の様子に、何かヘンだと子供ながらに感じた。



『今日は帰りが早いのね』

『集団下校の日だから』



俺の母親は美人で、自慢の母親だった。



……だけどその日は、



いつも以上に、キレイだったんだ。



『今日は学校からそのまま結雨ちゃんのおうちに行ってねって朝言ったわよね?』

『うん。忘れ物取りに来ただけ』



その日は、父親も母親も仕事で。



それぞれ帰りが遅くなるからと。



俺は朝、学校からそのまま隣に住んでいる結雨の家に行くように言われていた。



だけど、なんだかヘンだった。



いつも仕事に行っているはずの母親が家にいて、



目の前に立っている母親の後ろには、大きなスーツケースが見えた。



『お母さん……どっか行くの?』