俺は結雨から視線をそらし、ベランダの手すりにもたれた。 近くの公園の桜は満開を過ぎ、薄ピンク色の花びらは風に乗って宙を舞う。 それでも、 外灯でライトアップされた夜の桜の木は、幻想的な美しさを見せる。 この場所……ベランダから見る桜は、 何年経っても変わらない景色で。 今年もまた春がやってきたんだと、 桜は散っていくんだと。 胸を切なくさせた。 桜の花びらが舞い散る頃の、忘れられない記憶。 つぶれた心。 消したい、消せない過去。 消えていったあの人。 10年前のあの日――。