「ふけよ。俺の顔」
「はぁー!?」
「早くふけ」
「ったく、もぉ……」
長袖を着ている結雨は、手を隠した袖の部分で、俺の顔についた水滴をぬぐう。
「湊ちゃんは、ホントに世話が焼ける子でちゅねー」
結雨の袖が俺の顔から離れた瞬間、俺は結雨の顔を見つめた。
「どしたの?急にマジメな顔して……」
一瞬。
あの日の結雨の声が。
“湊ちゃん”
聞こえた気がして。
「……湊?」
……わかってる。
結雨がなんで春になると毎年のように、ベランダで花見をしようと言うのか。
その理由も。
俺のためだってことも。
全部……わかってる。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
