湊は、あたしの手首を掴んだまま階段を上がっていく。
「ねぇ、湊っ」
「あ?」
機嫌悪そうに返事をする湊。
いまので“彼氏役、めんどくせー”とか言い出しそうで怖い。
「ごめんね?」
「なにが?」
「あたしのためにさ……。それより部活の先輩に向かって、あんな口のきき方して大丈夫なの?」
「おまえ……心配するとこ、そこかよ?」
「だって……」
先輩に向かって“おまえ”とか言ってたじゃん。
「気にすんな。俺はへーき。前からああだし」
「よく許されるね。うちのバスケ部、上下関係緩すぎでしょ」
たぶん、生意気なのは湊だけだと思うけどさ。
「でも、どうしてあたしが、あの場所にいるってわかったの?」
「あぁ、奈乃が俺に伝えに来たから」
そっか。奈乃が……。
さっき、あたしのこと心配そうに去っていったもんね。
「アイツに何された?」
「なにも……されてないよ。大丈夫」
キスされそうになったけど。
一瞬、惑わされそうになったけど。
先輩の頬を引っ叩いて、目が覚めた。
「ほら、あたし。反射神経いいし」
「あ?なんの話だよ」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
