「ごめんなさい。先輩がふざけるから……」
……キスなんてしようとするから。
「ふざけてないよ?」
急に真剣な顔になって
あたしの瞳をまっすぐ見つめて
ふざけてないって……なに?
ふざけてるとしか思えない。
それなのに……あたしはなんてバカなんだろう。
一瞬、足も体も動かなかった。
「結雨の手、大丈夫?」
先輩は頬を叩いたあたしの手をとり、優しい声で訊く。
叩いたあたしの手を心配するより、その痛そうな頬を心配してよ。
「平気です……」
目を伏せたあたしは、小さな声で答える。
そのとき、向こうから冷ややかな低い声が聞こえてきた。
「ここで何してんだよ?」
その声のほうに向くと、湊がこっちを睨みつけて立っていた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
