「は?おまえまた盗み見てたのかよ」
湊はあきれた顔で、あたしを見る。
「違うよ。その……う、噂で聞いたの」
「噂?」
のぞき見してた快から聞いたとも言いづらいし、噂で聞いたことにしておこう。
「あたしのこと悪く言った女の子に強く言ってくれたんだってね」
湊はあたしに背を向けた。首と肩が凝ったのか、音を鳴らしながら回している。
「あたし別に、何言われても平気だからね?だって他の人から見れば、先輩から湊に乗りかえた軽い女に見えるだろうし……」
「俺は平気じゃねーから」
湊は動作を止めて、あたしに背を向けたまま冷たく言い放つ。
「ムカつくんだよ。何も知らねぇくせに勝手なことばっか言うやつ」
「湊……」
あたしはベッドの上に座ったまま、湊の背中を見つめる。
「別におまえのためじゃねぇから」
そう言って湊は、あたしの部屋を出て行った。
部屋にひとりぼっちになったあたしは、ベッドの上に横になる。
「うそつき……あたしのためじゃん」
今朝の手を繋いだ件といい、
悪口を言われたあたしを、かばってくれた件といい、
ヒザ枕してくれた件といい……
なんか、なんか……調子狂うんですけど。
でも……素直にうれしかった。
“俺の前で我慢すんな、バカ”
湊の言葉、うれしかったよ。
ありがと……湊。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
