快とバイバイをしたあと、あたしは帰り道をひとりで歩いていく。
今日は、二階堂先輩と会うことはなかった。
学年が違うのもあって、教室の場所も遠い。
休み時間、校舎内のどこかですれ違うこともなかった。
偶然、先輩の姿を見かけることもなかった。
会わずに今日を終えたことに、心のどこかでホッとしている自分がいる。
先輩の顔を見るのが、まだ本当は怖い。
どんな顔をすればいいのかも、わかんない。
先輩の前で、もう絶対に泣いたりできないし。
湊と付き合ってるフリもしなきゃいけない。
先輩のことなんて、もう好きじゃないって。
浮気されてまで好きでいると思ったら大間違いだって。
もう気持ちなんか少しも残ってないって……大っ嫌いだって……。
そう……先輩の前では強がっていたいのに。
「……っ」
あたしは道の途中で立ち止まり、オレンジ色に染まり始めた空を見上げる。
瞳に浮かぶ涙が、空の色を滲ませた。
もう好きなんかじゃない。だいっきらい。
そう強がっていたいのに。
だけど、先輩の顔を見たらあたしは……。
きっと……好きって想いが、溢れてくるんだろう。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
