そのあと、くだらない話をしながら快と一緒に下駄箱に向かった。
明るい性格の快とは、ノリも合うし会話も弾む。
「今日は用事あるから帰るけど、今度ゆっくり湊とのこと聞くからなっ」
「別に話すことなんて何もないってばぁ」
「まぁまぁ照れるな」
「て、照れてないからっ」
下駄箱で、靴を履きかえたあたしたち。
「じゃーな、結雨っ」
笑顔であたしに手を振った快は、先にトントントンとリズムよく昇降口の階段を下りていく。
快が走り出そうとした瞬間、あたしは後ろから快を呼び止めた。
「快っ」
あたしの大きな声に、快は立ち止まって振り返る。
「ん?」
「快は、好きな人いないの?」
あたしの言葉に一瞬、快の表情が曇ったような気がした。
だけど、あたしが次に瞬きをしたときにはもう、
いつもの明るい快の笑顔がそこにはあって。
「……いるよっ」
快は、そう大きな声で答えて微笑んでいたから。
だからあたしは、きっと。
何でもないことだと、それを見過ごしていたんだ。
「また明日なっ」
「あ、うんっ!バイバイっ」
快の走って帰っていく後ろ姿を、あたしはその場から見つめていた。
「快も……好きな人がいるんだ……」
そう呟いたあたしは、大きく息を吸い込んで空を見上げた。
快の好きな人って、誰なんだろう……?
うちのクラスかなぁ?
それとも他のクラスかなぁ?
みんな、恋してるんだね。
……湊以外はさ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
