「快、まだ帰ってなかったの?」
「忘れ物~」
そう言いつつ、あたしの前で立ち止まった快は、ニヤニヤしながらヒジであたしの腕をつつく。
「え?なによ?」
「湊が告られてるとこ、見ちゃった~俺」
それでニヤニヤしてんのね。
「湊のやつ、軽くキレてて微笑ましかったな~」
「え?キレたの?なんで?意味わかんないんだけど」
「湊に告った女子がさぁ、結雨のこと悪く言ったんだよ。バスケ部の先輩から湊に乗りかえて、どーのこーのって……」
「それで?」
「それで、デビル湊ちゃんに変身しちゃったってわけ。ま~怖い顔で“もしまた結雨のこと悪く言ったら許さねぇかんな、ブス”って。あの子もさぁ、好きな相手にそんなこと言われたら泣いちゃうわな」
なにしてんのよ、バカ。
……あたしのため?
さっきすれ違った湊がすっごく不機嫌だったのは、あたしが悪口言われたからなの?
それでキレるとか。
いや、ちょっと信じられないんだけども。
「湊のやつ、結雨のこと大好きなんだなっ」
いや、違うの。
違うんだよ、快。
「なんか俺、湊のことだんだん可愛く思えてきた」
ニコッと微笑む快に合わせて、あたしも無理やり微笑む。
違う……違うよ。
湊があたしをかばってくれたのは、いま彼氏のフリをしてるから。
それか、昔からの仲……幼なじみの情があるから。
きっと、そうだよ。
それしか考えられないから。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
