――キーンコーン、カーンコーン。
帰りのHRも終わり、下校時刻のチャイムが校舎に鳴り響く。
生徒たちの話し声や足音で賑やかになり始める放課後。
「結雨、ちょっと来い」
担任のくぼっちに手招きで呼ばれて、あたしは黒板前の教卓に駆け寄る。
「なんですか?」
あたしの顔を見て、くぼっちは笑いながら1枚の用紙を差し出した。
「ちゃんと書いてから出せって」
あたしがくぼっちから受け取ったのは、進路希望の用紙。
あたしは自分の名前だけを書いて、他の項目は空白のまま提出していた。
「だって……まだ何も考えてないんだもん」
卒業後の進路のことより、いまは先輩への復讐のことで頭がいっぱいなのに。
「相談したいことがあったら、いつでも言えよ?」
「優しいね、くぼっち先生は」
「よく言われる~」
「すぐ調子乗るんだからぁ」
呆れたように呟くあたしを見て、ニコニコと笑っているくぼっち。
「まぁ、これで決定ってわけじゃないんだし、いまなんとなく思う進路希望でいいから来週までに書いてこい」
「なんとなくって言われても……」
「くれぐれも“湊のお嫁さん”とか書いてくんなよ?」
「書きませんけどっ!」
すぐふざけるんだから……もぉ。
「まぁ、それでもいいけど」
「よくないからっ!先生のくせに、ふざけすぎですよ?」
満面の笑みを見せるくぼっち。
「うざ~い」
「うざい言うなっ」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
