「ドキドキする恋も、そのままの自分でいられる恋も。恋にも色々あると思うよ?」
そう言って奈乃は、あたしに微笑んだ。
「最初から想い合える恋なんて、奇跡だもん」
そう静かな口調で言った奈乃は、目を伏せた。
「恋は始めてみないと、その恋が幸せか、幸せじゃないかなんて……わからないじゃない?」
「奈乃と琥都は……?どうやって付き合い始めたの?」
「琥都が、告白してくれたの」
「そっか……想われる恋から、想い合う恋に変わったんだね」
あたしは……。
二階堂先輩とは最初から想い合えたんだって、
浮気を知るまでは、そう信じていた。
だけどそんな奇跡、簡単に起きるわけなかったんだ。
先輩との恋は、幸せなことばかりだった。
けど、その幸せは本物の幸せなんかじゃなかった。
あたしは先輩の嘘を、ヒミツを隠すための上手い言葉を。
幸せだと思い込んでいただけ。
あたしが一方的に想っていただけ。
先輩との恋に。
奇跡なんて、最初から起きてなかったんだ。
本当の幸せなんて、最初からひとつもなかった。
「恋の傷は、恋で癒すのがいちばんだよ。最初は寂しさからでもいいじゃないっ」
「奈乃……」
「二階堂先輩のことなんて忘れるくらい、これから湊くんのこと好きになれたらいいねっ」
「そ、そぉだね」
ごめんね……奈乃。
騙してごめん。本当のこと言えなくてごめんね。
二階堂先輩への復讐のために湊と付き合い出したなんて……
いまさら奈乃に言えなかった。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
