そう言って、正門のほうから、クラスメートの琥都が歩いてやってきた。
「なぁ、琥都!湊と結雨が付き合い始めたんだってさぁ~。やばくねーっ?」
満面の笑みを見せる快に、少し呆れた様子で微笑む琥都は、かけている黒縁のメガネを外して言った。
「だからって快、おまえ騒ぎ過ぎな」
「だって大ニュースじゃんかよぉ」
「あぁ、まぁな」
普段から落ちついた雰囲気の琥都は、いつもの優しい笑顔であたしたちを見つめた。
「湊、結雨。よかったじゃん、おめでと」
「ん」
「ありがとぉ。琥都っ」
湊もあたしも、琥都の言葉に笑顔で返事をした。
あれれ……?
快だけじゃなくて、琥都も。
あたしたちのことを、少しも疑ってないみたい。
なんだか、いける気がしてきた。
「ふたりが手ぇつないでるなんてなっ。記念に写真とっていい?」
そう言ってイタズラっぽく笑う快は、制服のポケットからケータイを取り出した。
「もぉ~ふざけないでよぉ。快ってばぁ!やめてって」
「いいじゃん、いいじゃんっ。はい、湊も結雨も笑ってー?」
すると、湊はニッコリと笑いながら快に向かって言った。
「写真撮ってもいーけど、おまえのケータイあとで窓からぶん投げてやっから」
「はい、出たー。デビル湊ちゃん」
そう言って快は、写真を撮らずに慌ててポケットの中にケータイをしまう。
「冗談だっつーの」
湊が笑いながら呟くと、快は手のひらと首を横に振りながら言った。
「いやいやいや、湊ならやりかねないからな。いまケータイ高いんだぞ?」
「知ってる」
ここで4人で立ち話をしている間もずっと、湊はあたしの手を握りしめたままでいた。
通り過ぎていく生徒たちも、みんなあたしたちを指差しながらヒソヒソと話している。
それを見て、快が周りの生徒たちに向かって、大きな声で叫び出した。
「おーい!みんなー!校内1カップルの誕生だぞーっ」
「快っ!声でかいってば……」
あたしは快の背中をバシッと叩く。
しかも、さっきからその“校内1カップル”ってなんなの?
勝手に校内1にしないでよ。恥ずかしすぎるわ。
「あー痛ぁ。結雨、力強すぎな!いーじゃん。めでたいニュースなんだから、みんなにもお知らせしないとさ」
快は、あたしが叩いた背中をさすりながら笑っている。
そのとき、校舎の方から大きな声が聞こえた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
