道行く人の視線を感じる。
「いいわねぇ、若いってぇ……」
杖をついて歩くおばあちゃんが通りすがりに微笑んだ。
湊があたしの手を握っている。
湊とあたしが手を繋いで歩いている。
あたしたちも、こんなふうに手を繋いでいれば普通のカップルに見えるのかぁ。
湊に付き合おうと言い出したのはあたしだし、
これもすべて復讐のためなんだけど、なんか……なんか……。
湊のほうから、手を繋いでくるなんて思わなくて。
その……戸惑ってるっていうか。
「そ、湊は……あたしと手つなぐの平気なのっ?」
「…………」
……え?なにこの沈黙。
湊はあたしの顔を一度見たあと、プイッと顔を背けて言った。
「付き合い出したこと手っ取り早く広めんなら、これがいちばん自然だろ」
「あ……うん。そーだね」
なんだったんだろう。あの沈黙。
あたしの手を握ったまま歩く湊の斜め後ろ姿を、あたしは見つめながら歩いていく。
湊ってば、何気に真剣に考えてくれてたんだね。
そうだよね。
確かに二階堂先輩の気を引くために、
“湊と付き合いましたー”って、わざわざ先輩に言いに行くわけにも行かないし。
校内に噂を広めるのが、いちばん自然な方法だわ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
