「……行きます」
歩きながら、湊は眠たそうに大きなあくびをする。
「ふぁぁぁ~ねむ」
「あたしのせいで寝不足だよね?ごめんね」
「ホントな」
憎たらしい顔して。
いつものことだけど。
「ほとんど寝てねぇ」
「そぉなの?」
「あぁ」
「なんで?」
あたしが湊の顔を覗き込んで聞いても、湊は目を合わせてくれない。
「なんでって、おまえ……」
「あ~まさか、あたしにドキドキしちゃって眠れなかったとか~?」
あたしがふざけながら人差し指で湊の頬をツンツンとすると、湊はあたしをギロッと睨みつける。
「バッカじゃねぇの?アホか。誰がおまえなんかに……」
「冗談じゃん」
「寝相悪いわ、寝言うるせーわ、俺の睡眠を邪魔しやがって」
「またまた~。そんな嘘ついちゃってぇ~」
あたしは湊の背中をバシッと思い切り叩いた。
「イッて……」
湊が自分の背中をさすりながら、車道側を歩くあたしの腕を掴んだ。
あたしはグイッと湊の左側に体を引っ張られる。
すると、すぐに湊の右側を後ろからバイクが追い越していった。
もしかして……危ないからあたしを左側に寄せてくれた……?
……ないない。
湊がそんなことしてくれるわけない。
「あー痛ぇ。俺の背中におまえの手形ついてんじゃねーか?」
「つくわけないでしょ?ねぇ、なんでいまあたしのこと引っ張ったの?」
「おまえ、犬のフン踏みそうだったから」
「あはは……それはどーも」
やっぱりね。
バイクじゃない。犬のフンだったわ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
