「このままじゃ、顔が残念すぎて笑える」
「ちょっとぉ!」
やっぱり優しくない。いつもの湊だったわ。
「てか、これで瞼の腫れ引くの?」
「温めたり冷やしたり交互にやればな」
さっき湊がキッチンに行ったのは、水で濡らしたタオルをレンジで温めてたんだ。
あの、めんどくさがりの湊が……めずらしい。
「湊のくせに、そんなことよく知ってたね」
「くせにってなんだよ。人がせっかく……」
「なになに?あたしのためにわざわざ調べてくれたのぉ?」
タオルを顔から離して、湊の顔をニヤニヤしながら見ると、
湊は目を細めて冷たく言い放った。
「んなわけねぇだろ。ボケ。常識」
「ふーん。常識ねぇ」
「黙れ、アホ」
「……はいはい。ありがとね」
あたしはテーブルに両肘をついて、目元に蒸しタオルをあてたまま瞳を閉じる。
いつもより、ほんのちょっとだけ優しい湊。
湊を優しいと思うなんて、あたし……相当弱ってる証拠だな。
泣き腫らした顔なんて、誰にも見せられない。
こんな顔……。
二階堂先輩には、絶対に見せたくない。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
