「恋をしたことがない湊には、女心なんてわかんないと思うけど……」
「悪かったな」
「失恋て、悲しくてツラくて、どうしようもないんだよ……」
どうしたらいいか、わかんないくらい苦しいんだよ。
たかが失恋したくらいでって、思う人もいるかもしれない。
だけど……あたしにとっては、何よりも大切な恋だった。
「湊も知ってるとおり、片想いの恋は今までたくさんしてきた」
でも、二階堂先輩と出逢って、恋をして。
初めて片想いが実って、付き合った人。
「だけど、あたしは知っちゃったの」
「なにをだよ」
「片想いのときには知らなかった幸せ」
ふたりでいる幸せ。
“好きだよ”って言われた時の、あの胸の音。
手をつないで歩く、ドキドキした時間も。
“おやすみ”と言って電話を切って眠る夜も。
ふたりでいることの幸せを、あたしは知ってしまった。
「それを一瞬で失ったんだよ。あんな形で……」
何より純粋だった想いは、裏切られ。
信じていたものは、幻だった。
もう戻れない。
先輩と出逢う前には戻れないから。
「あたしが立ち直るには、これしかないと思う」
そうでもしなきゃ、この悲しみに耐えらんない。
「復讐?意味わかんね。どうして俺がおまえと付き合わなきゃなんねぇんだよ」
「こんなこと、湊にしか頼めないもん」
「俺に、おまえの復讐に付き合えと?」
あたしはコクンと小さくうなずく。
「おまえは俺を何だと思ってんだ?」
悪魔……じゃなくて、いまだけは天使だと思ってます。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
