「ありがとね、湊」
あたしは涙を拭いて、湊に微笑む。
「湊に話したら、少しだけスッキリした」
「……なら、よかったけど」
あたしのかわりに毒も吐いてくれたし。
湊がこんなふうに真剣に話を聞いてくれるなんて、思わなかったよ。
「湊くーん!電球切れちゃったみたいなのよ。手伝ってくれなーい?」
部屋の向こうから、お母さんの声が聞こえた。
「湊、行ってきていいよ」
「あぁ。もう平気か?」
「うん。あたしは、これから現実逃避するから」
あたしはそばにあったケータイを手に取る。
「現実逃避?」
「ケータイ小説読むから」
湊はあたしのケータイを横から覗き込む。
「ふーん……涙空?雨上がりにキス……」
「ちょっと!勝手に覗かないでよっ」
あたしはケータイを自分の胸にパシッと当てる。
「そんな隠すことかよ?エロい話でも読んでんのか?」
「違いますぅ。元カレを忘れられない話ですぅ」
あたしは口を尖らせて、湊の顔を見る。
「へぇ。元カレを忘れられない話ねぇ」
「べ、べつに深い意味はないよ?二階堂先輩と別れたこととか関係なく、たまたま読もうと思って……」
「……あっそ」
いつものクールな態度に戻った湊は、ベッドから下りて、あたしの部屋を出て行く。
――パタン。
湊が部屋を出て行った途端、あたしの瞳にはまたじわりと涙が溢れた。
「……なんでよぉ……あんなに泣いたのに……」
どれだけ泣いたら、涙は止まるの……?
どれだけ泣けば、先輩への気持ちは消える?
あんなことされたのに。
裏切られたのに。
あたしじゃない女の子にキスしてたのに。
それなのに
あたしはどうしてまだ、
先輩のことが好きなんだろう。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
