家に帰ったあたしは、自分の部屋のベッドに倒れ込む。
枕に顔をうずめると、枕がすぐに涙で濡れた。
瞳を閉じると、保健室で見てしまった光景が思いだされる。
「……ううっ……うーっ……」
先輩が、他の女の子とキスしてた。
あたしじゃない女の子に触れてた。
信じてたのに
先輩のこと大好きだったのに
だけど先輩は、あたしの気持ちさえ疑った。
“俺のこと、ホントに好きだった?”
あたしがキスしなかったから?
こうなったのは、あたしのせいなの?
もうわけわかんない……。
胸にポッカリと
大きな穴が開いたみたいで
悲しくて、虚しくて
失ってみて改めて思う。
この想いは
あたしの中で
あまりに大きな存在だったんだと。
あたしにとって恋は
あたしのすべてだった。
何もなかった。
あたしには他に何もない。
心を動かされるものも
一生懸命になるものも
あたしには恋しかなかった。
だから……。
恋を失ったと同時に、自分のすべてを失ったような気持ちになったんだ。
――ブーッ、ブーッ。
制服のポケットの中で、ケータイが振動している。
ケータイを取り出して画面を見ると、湊からのメールだった。
*************
おまえ、いまどこにいんの?
*************
「湊……」
涙の粒が、ケータイの画面にポタポタと落ちていく。
湊に返信する気にもなれずに、
あたしはケータイを握ったまま、枕に顔をうずめた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
