嘘と本音と建前と。

「空知はもうちょっと色が濃い方がいいかも。買うんなら、だけど。」


司に見透かされたようでさらに恥ずかしくなった。


丁寧に畳んでコートを返すと司はまた椅子にかけた。


「今週の日曜日はオフだよね。予定あるの?」


空知は反射的に首を左右に振った。


司が丁度教室に入ってきた米倉を手招きした。


「映画見た後、空知も呼んで遊ばない?」


米倉がネックウォーマーを抜き取ってぐちゃぐちゃになった髪を

手ぐしで直している。


「おう、いいぜ。」


米倉は毛先が大きくはねた前髪を指でいじった。


空知が入ることに何の違和感も感じないようだ。


司は「楽しみだね。」と微笑んだ。


今更断れないことくらい空知にだってわかっている。


空知は曖昧に微笑んだ。