嘘と本音と建前と。

キンキンと耳に通る楓の声がより出掛けることを億劫にさせる。


「もう行くから先出てて。」


司は洗濯機の上に無造作に置いたアウターとマフラーを掴んだ。


隣を歩く楓の足取りが軽い。


いっそのことそのまま飛び跳ねて飛んでいってくれればどれほど

助かるだろうか。


本来ならば香織から借りた純文学を読み切るために使うはずの休日を

楓に潰されたのだ。


楓が喜ぶだろうと選んだ水族館は人が多く今にも帰りたい気分になる。


イルカショーもよりいっそう見たいと思えない。


どの水槽の前でも立ち止まる楓の一歩後ろで腕組みをしている自分が

映った。


辺りを見回すと子供とカップルばかりだ。


薄暗い中を進むんでいくとクラゲの水槽で司は立ち止まった。


楓はクラゲに興味はないのか素通りしようとする。