嘘と本音と建前と。

たしか兄も同じものを持っていた。


そのぬいぐるみだけはけして触らせてくれなかったことを

今でも覚えている。


メニューも見ずにそのぬいぐるみをじっと見ていると

萌々香のお母さんがお冷を持って近付いてきた。


名前は確かアキだったと思う。


「お決まりですか?」


少し低めのトーンで落ち着いている声がやけに懐かしい。


「えっとまだ少しいいですか?」


メニューから目を離し、顔を上げると目が合った。


みるみる表情が和らぐ様子で気付かれたとわかった。


「翼くん...じゃないわね。司くんの方ね。」


お冷をのせていたおぼんをぎゅっと抱きしめている。


「お久しぶりです。」


司は会釈するとアキに手を引かれ立たされた。