嘘と本音と建前と。

香織は拳を口元にあて作品名をオウム返しした。


「聞いたことないです。」


驚いた目つきで身を乗り出し輝いた目で香織は司を見つめた。


「小説って言うより自伝かな。詩を書いてた人だよ。」


「へぇ。」


関心した目つきで何度も頷くのを見て素直なところもあるのかと

司はますます香織についてわからなくなった。


司が掛け時計を見るとそろそろ帰る時間だった。


「じゃあ僕はこれで。」


今日は空知と帰る約束をしている。


「もう帰るんですか?」


意外そうな声で首をかしげる香織を見てまだ空知には

会わせるわけにはいかないなと感じた。


「君に会うためだけに来たから。もう用は済んだし。」


司は微笑みかけて香織が口を開く前にリュックを背負った。