まだ温かく、陽が当たっていた11月の始め。


私は、いつも通りの生活に満足していた。


ため息を吐くが自分自身に、不満はない。


「行ってきます。」


ヒンヤリと少しだけ冷たい扉を開けると、朝の眩しい光が飛び込んできた。


「行ってらっしゃいませ。」


後ろで深々と頭を下げている早恵。


その声を背にし、光に目を細める。


「おはよう、柚木。」


まだ光に慣れていない目に蓮の笑顔が映り込む。


それに胸が高鳴る。


これが、いつも通りの始まりを告げる。