中田くんは数学がずば抜けて出来る、 所謂、理系男子。 中田くんの表情は、窓から差し込む夕日で陰っていた。でも、その表情がとても優しいものであるだろうことは、簡単に想像できた。 普段の中田くんは、ツンツンして、冷たい人だという印象が強かった。でも、その時の中田くんの表情は私が今まで見てきた表情で、誰よりも優しいものだった。 “あの表情を、私にも向けて欲しい” 気がつくと私の中には、そんな感情が生まれていた。その時はまだ、この感情の名前なんて、知る由もなかった。