「うわっ、真っ暗だな。なんも見えねーし」
宿泊施設を出たところから少し離れると、街灯はなくただ真っ暗な闇が広がっていた。
何も見えないし砂利道で足場も悪いから、闇雲に歩いたら転びそう。
「スマホ持ってくりゃ良かった。持ってんだったら足元照らしてよ」
言われる前から画面を操作していたあたしは、ライトを点けて足元を照らした。
山の中だからなのか、夏だというのに風が冷たくて気持ち良い。
木々の葉が風に吹かれてザワザワと音を立てるだけの空間が、何だか妙に落ち着いた。
「お、んなところに良いもんあんじゃん。ちょっと座ろうぜ」
良いもん……とまではいかないけど、座れそうな大きな石の上に腰を下ろした長谷川君。
ちゃんとあたしのスペースも空けてくれて、座れと目で合図された。
少し距離を空けて隣に座ると、特に何も話すことはなく静かな時間が流れて行く。
何かを察しているはずなのに、何も聞かれないことにホッとしつつ、頭にはずっと海里のことがあった。
今頃……2人は一緒にいるんだよね。
悔しい。
悔しくて胸が苦しい。
海里の彼女はあたしなのに。
どうしてあたしがこんなにツラい思いをしなきゃいけないの?
海里のことがさっぱりわからない。
いらなくなったなら、きっぱり捨ててよ。
会いたいとか……そんなこと言わないで。



