吐きそう。


ムカムカして気持ち悪いよ。



隣が空席だからそこに寝転ぼうかとも考えたけど、平行だと余計に気持ち悪くなりそうだったからやめておいた。



やっぱりシートを後ろに倒すしかないかな。


そう思って、そっと振り返った。



真後ろに座っていたのは、クラスでも目立つグループにいる辰巳(たつみ)君。


辰巳君は誰がどう見ても羨むほどの美貌の持ち主。


同級生はもちろん先輩からもモテモテで、長谷川君同様かなり遊んでいるというウワサがある。


時には校門で中学生らしき女の子が待ち伏せしてたり、大人っぽい大学生の女の人と一緒にいるのを見た人がいるとか何とか。


とにかくこの2人は、同級生や先輩から一目置かれている存在。


あたしとは違って、キラキラ眩しい光の中にいる。



そんな辰巳君の隣には……。


げっ。


長谷川君が座ってるし。



辰巳君は寝てたけど、長谷川君はイヤホンを耳にして音楽を聴いていた。



「どうかした?」



あたしの視線に気付いた長谷川君が、イヤホンを外して首を傾げながら聞いて来る。



「ごめん、少しだけ椅子倒してもいい?」



本格的にヤバくなって来たせいか、冷や汗が流れ落ちた。