言いようのない怒りが込み上げて拳がプルプル震える。
だけど、怒るだけエネルギーのムダだから冷静にならなくちゃ。
ここでムキになったら、余計に相手を刺激するだけだ。
落ち着け、落ち着けと自分の胸に言い聞かせる。
ドクドクと鼓動がうるさいのは、いくつもの冷ややかな視線が胸に突き刺さって苦しいから。
彼女たちには何を言ってもムダだってことを知ってるし、ホントのことをわかって欲しいだなんてこれっぽっちも思ってない。
信じてもらえるなんて、もっと思ってない。
ただ、世の中の理不尽さが嫌でたまらなかった。
なんであたしがこんな目に遭わなきゃいけないの?
スーッと息を吸い込み、覚悟を決めて震える足を動かした。
「どこ行くんだよ!?まだ話は終わってないだろーが!」
肩を掴まれて、あまりにも強いその力にバランスを崩しそうになった。
だけど何とか踏み留まり、彼氏を誘惑したとカンチガイしてる先輩の顔を見上げる。
その大きな瞳からは、憎しみと恨みがこもっているのがわかって胸が痛かった。
……いつもの目だ。
いつだってあたしには、こんな視線しか向けられない。
「いくら言っても信じてもらえないので……帰ります」
「はぁ?当然だろ!あんたの言うことなんて、信じられるわけないんだよ!」
振り上げられた腕と、鬼のような形相に固まる。
ーーパシン
次の瞬間、頬に鈍い痛みと乾いた音が響いた。