「あー、うっざ!」
バンッと勢い良くトイレの入口のドアが開いた音が、個室に入っていてもうるさいほどに聞こえて来た。
「海君の彼女、マジでウザすぎなんですけどー」
聞き覚えのある声にビクッとする。
海君の彼女って……考えなくてもあたしのことだよね?
「だよねー!これじゃあ、歩美(あゆみ)がかわいそうだよ」
「そうそう。ずっと海君一筋なのにさー」
毒づく彼女たちの声がグサグサと胸に突き刺さる。
さっきの冷ややかな視線を思い出して、胸が締め付けられる思いだった。
陰口を言われることには慣れているからどうってことはないけど、それでも気分のいいものじゃない。
「あれはマジで男好きな感じだったよねー。みんなに可愛いって言われて、まんざらでもないって顔してたし」
「だねー!あたしはモテるとか思ってそう!」
「海君が歩美と浮気したくなる気持ちわかるわー!さっきだって海君に見向きもしないで、楽しそうにエイタと喋ってたし。彼氏の前で男漁るとかありえないし」
「そりゃ海君も毎日歩美を家に呼びたくなるよね」
え……?
なに、それ。
どういう……こと?
胸に鋭い衝撃が走る。



