だって。
信じて裏切られたら、傷付くのはあたしだもん。
この世に絶対なんてものは何もない。
形のないものを信じることほど怖いものはないから、それなら最初から信じなければいいだけのこと。
表面上だけうまく取り繕って、その場限りの付き合いを続けていけばいい。
本音をさらけ出すなんて、そんな面倒くさい生き方をあたしは望んでいない。
それでもあたしは、たったひとつの揺るぎないものが欲しかった。
決して裏切ることのない、揺るぎない何かが。
あたしは臆病になりすぎて、信じる気持ちをどこかに忘れて来てしまったんだ。
亜子ちゃんと取り留めのないことを話して時間を潰した。
「太陽と長町君、学校でも常にゲームばっかしてるよ。授業中とかオンライン通信までして、ボス倒すのに必死だしさー。亜子はいっつもほったらかしだよ」
「そうなんだ」
ムッとする亜子ちゃんの横顔が可愛くて、太陽君のことがよっぽど好きなんだなって伝わった。
学校の中の海里の姿を知らないあたしは、亜子ちゃんから聞かされる話が新鮮で思わず聞き入ってしまう。
海里はあんまり詳しく話してくれないから余計に。
亜子ちゃんから番号とアドレスを教えて欲しいとお願いされて、特に断る理由も思い付かなかったから教えることにした。
そのあと亜子ちゃんは太陽君の元に行ってしまい、あたしは輪の中に入って行けずぼんやりしていた。
気を遣って残りの男子たちが話を振ってくれたりしたけど、愛想笑いを浮かべることしか出来なくて。
海里が早くゲームを終えてくれることだけを願っていた。
あれから1時間くらい経ったけど、なかなかゲームを終えようとしない海里にしびれを切らしてひとりでトイレに向かう。
知らない人に囲まれる中で愛想笑いを浮かべ続けるのは、気疲れ感がハンパない。
あーあ。
海里と2人きりになりたいな。
このあと……どうするんだろ。



