「ユメの気持ち、よくわかるよ」
ヒロトの腕の力がギュッと強まる。
顔は見えないけど、苦しくて切なげな声に今までにない違和感を覚えた。
かすかに震えるヒロトの体。
いつもは取り繕ってて感情が読めないけど、今のヒロトはすごく儚げで弱っているように思える。
「俺んちね……DVっつーの?物心ついた時から父親がそんな男でさ。母親と俺に怒鳴り散らしては、手ぇ上げて威張ってるような家で育ったんだ」
え……?
DV……?
「小6の頃……だったかな。母親がそんな父親に痺れを切らして家を出たのは。もともと育児放棄されてたし、俺や姉ちゃんが殴られてても心配してくれるような母親じゃなかったんだけどさ」
ヒロトの抱えていたものは、あたしが想像するよりもずっと重くて苦しくて。
同情しているわけじゃないけど、涙が溢れそうになった。
「けど、さすがに新しい男作って出てった時は傷付いた。あー、俺ら捨てられたんだって。あんな奴、母親だって思ったことなかったけど」
「今思えば、ユメと同じで寂しかっただけなのかもな」と、ヒロトは続けた。
「だから、ユメの気持ちはよくわかるよ」
自分だってツラいはずなのに、あたしを安心させてくれようとするヒロトの優しさに胸がいっぱいになった。



