「今では姉ちゃんが羨ましい。あいつの血を引いてるって考えただけで、生きてんのが嫌になる」
「なに、言ってんの……」
羨ましい……?
それ、本気?
握り締めた拳がぷるぷる震えて、それを鎮まらせるように唇を噛み締める。
自分の顔からスーッと表情が消えて行くのがわかった。
「俺も……父さんの連れ子だったら良かったのに。あいつから生まれたって考えただけで、吐き気がする」
その時、プツンと頭の中で何かが切れた。
「……んな」
もうガマン出来ない。
あたしが今まで、どんな思いで過ごして来たかなんて知らないくせに。
「甘ったれんな!バカ広大!」
目の前までズカズカ歩いて行き、下から睨み付けるようにその顔を見上げる。
驚きに満ちたその顔は、まだどこか寂しげで迷いがあるように見える。
「あたしは……あたしはずっと、広大が羨ましかったよ。血の繋がりがあるってだけで、お母さんはずっとあんたに付きっきりで面倒見てたんだもん」
母親の手に抱かれて眠る広大が羨ましかった。
広大だけに向けられる、とびっきりの笑顔が羨ましかった。
広大になりたいって。
あたしのホントのママなら良かったのにって、何度そう思ったかわからない。
「風邪を引いた時、夜通し看病してくれたのは誰?あたしは好きなのに、家に一切牛乳がないのはなんで?あんたの帰りが遅かったり、帰って来ない日は寝ずに待ってるんだよ?」
毎日毎日、帰ってくるかもわからないあんたの分の晩ごはんもちゃんと用意されてる。



