キミに捧ぐ愛



その人は学ランを着たガタイのいい男の子で、ぶつかったあたしに見向きもしないでそのまま走って行ってしまった。


明るい茶髪に、キラリと光る右耳のピアス。


通り過ぎる時に見えた横顔は無表情。


でもそれは、あたしが良く知る人だった。


見間違えるはずもない。



「亜子ちゃん、ごめんっ!ちょっと用事が出来たから1人で帰ってもらえる?ホントにごめんねっ!また連絡するから!」


「え?結愛ちゃ……」


「ごめんっ!」



返事も聞かずに駆け出した。


繁華街の中の細い路地を曲がって行く姿がチラッと見えたから、慌てて後を追う。


夕方の時間はかなり混雑していて走りにくかったけど、ぶつかりながらも必死に足を動かした。



早く早く早く!


見失っちゃう!


焦ってしまい、さっきから色んな人に勢い良くぶつかって嫌な顔をされた。


「すみません」と言いながら、とにかく走った。


今追いつかなきゃ、きっと手遅れになる。


だから、絶対に見失うわけにはいかない。



細い路地を曲がろうとした瞬間、ものすごい勢いで後ろから腕を引っ張られた。



「きゃあ」



勢いのあまり、そのまま後ろに倒れそうになる。