『次、こっち』って、さっきそう言ったよね?
わけがわからなくてポカンとしていると、長谷川君はバツが悪そうにあたしから目をそらした。
そして、静かに口を開く。
「ごめん、何でもない。なんで呼び止めたのか、自分でもわかんねー」
え?
「なにそれ……」
わけわかんない。
「うん、だよな。俺も。とにかく、なかったことにして」
髪を掻き乱しながらそんなことを言う長谷川君に、ますます疑問は膨らむばかり。
まぁ……いいけどさ。
そのあともしばらく勉強したけど、長谷川君とは何度も目が合って。
その度に気まずそうにパッとそらされた。
前までは優しく笑ってくれたのに、これまでと違い過ぎる態度にハテナマークが浮かぶ。
いったい、どうしたの?
「あたし、怒らせちゃったのかな?」
長谷川君がトイレに立った隙に、辰巳君に疑問をぶつけてみた。
辰巳君に聞いたってわかるわけがないのに、気になって聞かずにはいられなかった。



