振り返るとそこには、無表情にあたしを見下ろす辰巳君の姿。
今日は長谷川君と一緒じゃなくて1人みたいだった。
「ねぇ、あれってリュウくんじゃない?」
「わ、ほんとだ!こんなところで会えるなんてラッキー!」
通りすがりの派手な女の子たちが、キャアキャア黄色い声をあげる。
「おい、聞いてんのか?」
それをうっとおしそうに見つめながら、さらに詰め寄られた。
「あ、ごめん!な、何してんのかなーって、気になって。近くに来たからちょっと寄ってみただけだよ」
しどろもどろになりながら、とっさに考えた言い訳を並べる。
こんなに焦ってたらウソだってバレバレだっただろうけど、辰巳君はあえて突っ込んで来なかった。
「入れば?もう少ししたら大翔も来るだろうし」
え?
「い、いいの……?」
ポケットから鍵を取り出して、扉を開けようとしている辰巳君の背中に問う。
だって、辰巳君とあたしは仲が良いわけではないのに。
むしろ、この前だって辰巳君とはほとんど話さなかった。
それなのに。
「いいも何も、そのために来たんだろ?逃げたくなったんじゃねーの?」
「え……?いや、あの」
素直に『うん』って言えなかった。



