「当たっただけって……そんなわけないでしょ」


「ほんとに……大丈夫、だから。結愛ちゃんは、心配しないで……あの子のことは、ひとりでなんとかする、から……」


ポロポロ涙を流して泣く母親に、それ以上何も言えなかった。


べつに心配してるわけじゃない。

いくらなんでも、ここまでするのはどうかと思っただけ。


でもやっぱり、この人は部外者のあたしには立ち入られたくないみたい。



「部屋の中を片付けたり、夕飯の支度をするから。その間だけ、外に連れ出してくれる……っ?ごめんね、結愛ちゃん」



「……わかった」



「ごめんね……っ」



やめてよ。


簡単に謝らないで。


この人はこんなに弱かったっけ?


こんなに小さかったっけ?


泣きながら、あたしに頭を下げるような人だった?


『ごめんね』って言われる度に胸が苦しかった。



寝てる風大を起こして外に出た。


夏の日差しが暑くて、全身から汗が流れ落ちる。


「お姉ちゃん、どこ行くの?」


「うーん、どこ行こっか」


子ども連れでゲーセンやカラオケには行けないし。


「僕、公園がいい」


「そうだね、公園にしよっか」


「やったー!」


無邪気な風くんの笑顔に自然と笑みがこぼれる。


なんだ、あたしまだ笑えるじゃん。


それから公園に行き、2時間くらい遊んで家に帰った。



母親は何事もなかったかのように笑っていたけど、その笑顔はぎこちなくて。


きっと広大のことで頭がいっぱいなんだよね。


それでも風大がいるからムリしてたんだと思う。