「もう限界だから」
溢れる涙が邪魔をして海里の顔が見えない。
だけどかすれている苦しげな声を聞いただけで、胸が痛くてどうしようもなくなった。
「別れよう」
「……っ」
あたしがここまで海里を追い詰めてしまっていた。
あたしが……あたしが海里を傷付けて来たから。
あたしのせいで……こうなった。
でも。
「嫌だ……っ好きだよ。好きなんだよ……っ誰よりも……海里が好きだから」
別れたくない。
信用を取り戻せるように頑張るから。
もう一度やり直したい。
今のままでいい。
浮気してても……許すから。
深く詮索しないから。
「……ごめん、マジで限界。もっと早く好きって言ってくれてたら、まだやり直せたかもな」
耳元で静かにそう囁きながら、海里はあたしの目に浮かんだ涙を拭ってくれる。
ゴツゴツした男らしい指から伝わる海里の温もりに、今までの思い出が頭をよぎって涙が止まらない。
これ以上優しくして欲しくないのに、海里はいつまでもいつまでもあたしの涙を拭い続けた。
どうせなら、ひどいことを言って傷付けてくれて良かったのに。
そしたら……こんなに苦しい思いをせずに済んだ。
どれだけひどいことを言われても嫌いになれるわけがないけど、優しくされるくらいなら傷付けられた方がマシだった。
ごめんね。
あたしはどこまでも最低で、いつも自分のことしか考えてない。
こんな時でも、海里を悪者にしようとしてるなんて。
