下が静かになったのは、それから1時間も経たない頃だった。
バンッと荒々しく玄関のドアが閉まったことで、広大が家を出て行ったことがわかった。
風大を部屋に残して静かにリビングに行くと、母親が顔を覆って泣き崩れていた。
「危ないよ……破片が飛んでるんだから」
母親を立たせてダイニングの椅子に座らせた。
「ごめんね……っ結愛ちゃん。ごめんね」
「なにがあったの?広大はなんでこんなこと……」
「ごめん……ごめんね……っ。おか、さんのせいなの……っ」
ただ泣くだけで、なにを言っているのかはわからない。
だけどあたしは、同情なんかしない。
泣いてる母親を労ろうっていう気持ちも一切ない。
だって……泣いてるあたしに、あなたはなにもしてくれなかったから。
もし、もしも。
あたしが広大と同じように暴れたりしたら、この人は同じように泣いて止めてくれるのかな。
こうやって、顔を覆って泣き崩れる?
『出て行かないで』って言ってくれるのかな。
考えるだけムダだってことはわかってる。
答えはきっとノーだもん。
広大だから、母親は苦しいんだ。
ツラいんだ。
大事に大事に……可愛がって育てた子だもんね。



