「1人になりたいのに、来ちゃってごめんね」
「べつに。大翔が人を誘うなんて滅多にねーし。お前、よっぽど気に入られてんじゃねーの?」
「え?そうなの?」
「さー。知んねーけど」
「知らないって……適当だね」
まぁ、どうでもいいけどさ。
辰巳君は言うだけ言って再びスマホに視線を戻した。
相変わらず無愛想だけど、もう怖いとは思わない。
不思議だ。
自分と同じ共通点を見つけちゃったら、人って自然と仲間意識が芽生えるんだ。
イメージが簡単に覆るなんて。
それにしても。
長谷川君が人を誘うなんて滅多にないの?
軽くてチャラチャラしているように見えるのに。
女なんかいくらでも寄ってくるって言ってたじゃん。
「如月さん、なんか飲む?」
「ううん、大丈夫」
って、あたしもすっかり馴染んでしまっているけど……。
今頃海里はクラブで女の子と楽しくやってるのかな。
あたしのことなんて……もうなんとも思ってないの?
2年も付き合ったのに、そんなのってないよ……。
怒りよりも悲しさやショックの方が大きくて、考え始めるとまた涙が出てきた。
ダメダメ。
2人の前で泣くわけにはいかない。
そう思って必死に堪えた。
しばらくして冷静になると、残して来た亜子ちゃんのことが心配になって電話をかけた。
亜子ちゃんはクラブを出たようだったけど、電話口で泣いていて。
放っておくことなんて出来ず、駅で待ち合わせをして帰ることになった。
2人にお礼を言って溜まり場を出ると、駅まではすぐだった。
そして、大泣きする亜子ちゃんの背中をさすりながら帰路に着いた。